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 実大免震試験機( E-Isolation)概要と活用


国内初の実大免震試験機が誕生しま した
2005年に建設されたE-Defense(イーディフェンス)の隣接敷地に、免震部材・制振部材の実大動的試験を行う国内初の実大免震試験機( E-Isolation)が誕生しま した。

実大免震試験機 E-Isolation の概要 

E-Isolation 説明動画

免震構造の発展と免震研究推進機構の活動
世界の安全に貢献する確かな免震制振技術の発展を目指して免震構造の日本国内での歴史は1983年に遡ります。千葉県八千代台に建設された2階建ての住宅において、初めて免震構造が採用されました。その後、1995年に発生した兵庫県南部地震において、免震構造の優れた性能が確認され急速に普及が進みました。

日本の免震構造は約40年、1995年前後から増えてきた制振構造は30年、両者とも長い歴史ではありませんが、近年の大きな地震を受けて、これらの性能が発揮されています。免震構造・制振構造の優位性が社会に認識され、普及が進むと同時に、多くの技術開発が推進されています。

免震構造の上部構造は、この重量を支持しつつ水平二方向に大きく変形する免震部材の上に載って、大きな動きを起こします。ただ、この動きはゆっくりしており、上部構造に生じる水平力は小さく、柱・梁・耐震壁などは弾性挙動におさまります。限られた数の免震部材が大きな水平変形を受けることにより、上部構造の何百・何千の部材を守り、建物の中に暮らす人々を守り、社会・経済などの活動を守ります。制振構造は、鋼材ダンパー、オイルダンパー、制振壁などを骨組全体に組み込み、地震時の揺れを抑え、骨組を弾性挙動におさめることができます。

このようにして、建物、まち、都市の機能を地震後にも継続できますが、このためには、一つ一つの免震部材・制振部材が確かな性能を持っている必要があります。免震部材・制振部材の動的特性の検証・把握について、多くの関係者は実大の部材が実際の地震時に受ける状況を再現した実大動的試験の必要性を理解していましたが、実大部材の動的性状を検証できる「大型動的試験機」が日本国内にないため、実大の免震部材・制振部材について実際の速度・変形を与える実験が実施できませんでした。一方、諸外国を見ると、米国、イタリア、トルコ、中国や台湾には「大型動的試験機」が設置され、実大部材の動的実験検証が行われています。

この度、念願の「実大免震試験機 E-Isolation」が設置され、令和 5年度 から稼働を開始しています。免震部材・制振部材の真の性能を明らかにし、免震技術・制振技術をさらに発展させなければなりません。この技術によって地震時の高い性能が得られるだけでなく、構造体の初期建設に用いる鋼材、コンクリートなどの量を減じることもできます。これだけでもSDGs に寄与しますが、これらの構造物が迫る大地震を受けたとき、損傷を受けず継続して使えるようになり、今までのように「使用不能、取り壊し、再建設」の必要がなくなり、SDGs達成のために大きく貢献します。これは各企業にとって環境・社会・企業統治に配慮した重要なESG投資になります。大地震を受けても被害が起こらず、人々の生活だけでなく社会の活動が継続できる次の時代を、皆様とご一緒に造ることができれば幸甚に思います。

E-DefenseとE-Isolationにより、世界の耐震研究の拠点に
実大三次元震動破壊実験施設 E-Defenseは世界最大の3次元震動台を保有しており、最大1,2 00tonまでの重量の実大規模の建物に地震の揺れを直接与えることでその揺れや損傷、崩壊の過程を詳細に検討することができます。 この度新たに設置されたのは、大型動的載荷試験機であり、動的に最大30,000kN (3,000ton)、静的には36, 000kN (3,600ton) の鉛直荷重を 載荷した状態で実際の免震支承が経験する高速度、大変位の加振を可能としています。 日本には世界の大小の地震の10%が起きていると言われています。兵庫県三木市に大型震動台と実大免震試験機(大型動的載荷試験機)が整備されれたことで

実大免震試験施設 E-Isolation の活用 

実大免震試験施設独自の性能認証「Certificate」が免震部材・制振部材の信頼性をより高めます
今や社会はインターネットにより高度IT化し、BCPの観点では地震時の非構造部材の損傷による事業への影響が大きくなっています。免震構造の歴史はまだまだ浅く、免震構造の本格的な利用はこれからです。安心できるBCP対策としてもっと確かな性能を確保することが求められています。世界有数の地震国で、いかなる時も経済活動を持続するために、皆さんが自由にこの施設を利用できるように、様々な活用スタイルを準備しています。

・ 免震構造・制振構造の研究開発利用
・ 実プロジェクトでの免震部材・制振部材の性能実証試験
・ 海外からの研究開発利用
・ 免震部材・制振部材の性能認証利用「Certificate」

「Certificate」は、第三者機関としての免震研究推進機構が実施する免震部材・制振部材の性能試験とその認証制度です。従来の準静的大型試験機の場合、大きな鉛直荷重を載荷できますが、水平方向には低速度(約2cm/sec.)での試験に限定されていました。また、小型の試験機の場合は高速度で 水平載荷することができますが、作用できる鉛直軸力が小さいので動的な性能確認は縮小試験体にしか対応していませんでした。そのため、「実大の免震部材の静的な性能」と「縮小試験体の動的な性能」を基に、技術者の高度な判断と、実大の免震部材の動的な性能を外挿によって予測する、という ことが長く行われてきました。

免震研究推進機構では、実大免震試験機を用いて各メーカーの主な免震部材・制振部材の型番について、定期的に実大動的試験を行い、所定の性能が確認された型番の部材に対して性能認証書「Certification」を発行します。試験方法の標準化などについては、日本免震構造協会の委員会がまとめたJSSI規格2023を参考に進めます。これによって、多くの免震部材・制振部材について地震時の性能を直接調べることが可能になり、免震構造・制振構造の信頼性がさらに高まります。現状では、免震構造・制振構造が採用されている建築物は大都市が中心ですが、最終的には中小都市を含めた様々な構造物に採用されることで、地震によって人々の安全・安心が損なわれたり、社会活動が継続できなくなったりすることのない社会づくりに貢献したいと考えています。本施設は国からの支援によって建設されましたが、施設の運営は多くの皆様の活発な利用によって成り立ちます。免震研究推進機構では、安定した施設運営の方策として上記の施設運営の趣旨に賛同いただける会員を募り、本施設が国家レジリエンス(防災・減災)に末永く貢献できるように図っていく所存です。  

将来を担う若い研究者、設計者の研究、教育をサポートします
実大免震試験機の設置によって、これまで日本国内では実施することができなかった免震技術・制振技術に関する様々な研究を行うことが可能となります。現状の試験環境では解決できない上下動を吸収する支承など、これからの研究者・構造設計者が求める研究開発、夢のある構造計画への挑戦を支援していきます。

試験室に近接した制御・計測室から試験体の動的な挙動を目視できます
これまで実大の免震部材を動的に加力することのできる試験機が国内になかったため、若い技術者の多くは、実際の挙動を見たこともないまま研究や設計を行ってきました。実大免震試験施設は、試験の様子を目視によって確認できるような空間設計となっており、試験に立ち会った技術者にとって身になる経験を積むことができます。