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※本ニュースはコチラにあるE-Isolation説明動画もご覧の上で読むと、内容がより深く理解できます。
1.2023 年 3 月 実大免震試験機が兵庫県三木市に誕生!
「E-Defenseのほど近くに、実大サイズの免震部材の動的試験ができる施設が完成したらしい。」
建築や土木の設計・建設に従事されている方であれば、もしかするとその存在を耳にする機会も増えてきたかもしれない「E-Isolation 実大免震試験機」は、2023年の3月に兵庫県三木市に誕生しました。オープンから約10か月経過し、現在、様々な免震部材の試験のために目下、フル稼働しています。
実大免震試験機のイロハのイでは、この試験機の概要や、世界にいくつかある実大試験機とは全く異なるその新規性について簡単にご紹介します。
写真 1 兵庫県三木市に誕生したE-Isolationの概観
一般社団法人日本免震構造協会の調べによると、日本国内に建設されている免震建築物の数は2018年時点で約5000件にのぼると言われており、年間300件程度のペースで増え続けています。
免震構造は、水平方向に柔らかい免震部材により地盤と構造物を絶縁することで、地震時に免震部材より上の構造物(上部構造)の揺れをゆっくりとすることで上部構造に生じる水平力を小さく抑え、建物の損傷や什器の転倒を抑制しています。つまり、その性能は免震部材に大きく依存することになります。
この免震部材の性能確認には、「実大部材を用いた静的な試験」と「縮小部材を用いた動的な試験」の結果の両者を用いて行われることがほとんどで、「実大部材の動的な性能」については、多くの場合が既知のデータを基に推定されてきた、という実情がありました。
「実大部材の動的な性能」を確認するためには、海外に既に建造されている実大免震試験機を借用するしかなく、それ故、日本国内に実大免震試験機を建造することは長年の悲願だとされてきたのです。
このような背景の中、2021年に設立された(一財)免震研究推進機構が主体となり、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP-2)の取り組みの中で実大免震試験機が整備されました。
「E-Isolation実大免震試験機」の誕生により、免震部材の真の性能を試験機で確認することが出来るようになりました。
耐震構造では、損傷が全体に広がることによって大地震に耐えるため、上の写真に示したような被害が生じます。また、速く激しく揺れるので、什器の散乱も発生します。 | 上の写真は、免震構造を採用した場合のほぼ無被害の建物全景と建物内部の状況です。建物の損傷を十分に小さく抑えながら、建物内部の使用性も守ることができます。 |
図 1 耐震構造と免震構造
図 2 国外の既存「実大免震試験機」の設置地点:研究開発などの用途で実大部材の動的な性能を把握しようとする場合、
これまでは海外に部材を搬送し試験をするしかありませんでした。
図 3 免震構造建築物の歴史:世界では1999年に実大免震免震試験機が誕生し、長らく運用されています。
3.実大免震試験機の諸元
このような背景の中、2021年に設立された(一財)免震研究推進機構が主体となり、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP-2)の取り組みの中で実大免震試験機が整備されました。表 1 は「E-Isolation実大試験機」の載荷能力です。鉛直荷重の載荷能力は30,000kNに及び、約30階建ての超高層免震建築物に採用される免震部材にも対応した高い荷重載荷能力を持っています。 なお,試験装置を支えるRC躯体は,将来の載荷能力の増強と水平2方向加振への更新も想定して設計されています.
表 1 実大免震試験機の載荷能力
図 4 実大免震試験機の完成パースと諸元
図 5 E-DefenseとE-Isolation
図 6 実大免震試験機の立面構成
といった課題がありました。従来の計測方法では、摩擦力や慣性力の影響を試験結果から取り除くために何か月もの期間が必要となり、その結果、「試験実施日」と「試験結果を確認する日」の間に大きなタイムラグが生じていました。。
これに対し、E-Isolationの実大免震試験機では、動的水平ジャッキによって荷重を計測する代わりに、免震部材を通り抜けた荷重を直接計測するこでその課題を解決しました。
E-Isolationの荷重検出器は、試験体を上部にある反力梁の水平方向を支持するV字型荷重計測リンクに取り付けられています。
反力梁は剛強なRC反力壁上に設置された12台の天然ゴム系積層ゴム支承とPC鋼より線によって支持されています。12台の積層ゴム支承の水平方向の剛性は非常に小さく、垂直方向には高い剛性を有します。4本の荷重計測リンクは、反力梁と剛強なRC反力壁との間に水平に接続されているため、水平方向の反力の大部分はこれらの荷重計測リンクに入力され、その結果、摩擦力や慣性力の影響を受けない純粋な免震部材の水平力をリアルタイムで計測することが可能となります。
反力梁の動きは2mm以内であるため、反力梁の慣性力はほとんど発生しません。また反力梁を支持している12台の積層ゴム支承の水平変位が小さいこと、積層ゴムの剛性が十分に小さいため、この積層ゴム支承を介して伝達される水平方向の力は全体水平力のわずか1%以内に留まります。
PC鋼より線は積層ゴム支承を常に圧縮状態に保つため初期張力が導入されています。PC鋼より線の張力は、試験時に微小な水平変位が生じても、その長さが十分に長い(14.6m)ため変化せず、これによりP-Δ効果による水平方向剛性も正確に捉えることができます。
図 7 従来の試験機とE-Isolationの新しい計測機
図 8 天然ゴム系積層ゴム支承を用いたプレ試験結果の例:緑で示す平行四辺形の履歴ループは水平動的ジャッキによる荷重履歴、
ほとんど履歴のない黒色のループは、4本の荷重計測リンクで計測されたものです。水平ジャッキによって荷重を計測してしまうと
摩擦力由来の履歴面積を有する水平荷重-水平変形関係になっていますが、本システムによる計測結果では、
天然ゴムのリニアな特性を正確に計測できていることが分かります。
この荷重f(t)と、上記の試験データにローパスフィルターを通した荷重履歴はほとんど一致することを確かめてあります
。
リアルタイムハイブリッド試験には、この f(t) を直接用います
。
リアルタイムハイブリッド試験でない試験の結果報告には、上記の f(t) に約6Hzのローパスフィルターを通したデータを用います。
1. 性能認証(Certificate) 製造メーカの申請により、製造メーカが製造している主要な免震部材・制振部材について、3年に一度の頻度で実大動的試験を実施し、第三者機関として性能を認証する方法です。結果として、発注者、設計者、施工者が安心してこれらの部材を用いることができます。 建設時に試験を行わなくて済むため、建設工事の進捗に影響を与えない利点があります。免震部材・制振部材を少量使用する小規模構造や工期が短く性能確認(Project)の試験を行わない免震建築・制振建築の場合に有効な性能認証(Certificate)です。) 2. 性能確認(Project) 性能確認(Project)は、個別プロジェクトにおいて、その構造物に使われる多数の免震部材・制振部材から試験体を選び、実大動的試験を行い、これらの品質・性能を第三者機関として確認する方法です。大規模な免震建築・制振建築の場合に有用な方法です。実際の建物に使用する免震部材・制振部材の性能を直接確認するので、上記の性能認証(Certificate)と併せて、品質についてより高い信頼性を与えることができます。 |
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